世界各地で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、欧米を中心に「非常事態宣言」を
出した国も出てきている中、動物医療のオンライン診療に関する議論も
各国で積極的になされています。
今回は、それぞれの対応状況をまとめたVIM NEWS SERVICEの
記事「Veterinarians turn to telemedicine amid COVID-19」をご紹介いたします。
新型コロナウイルスの感染拡大が動物医療におけるテレメディスンの議論を進めた
動物医療において、テレメディシンの議論は10年間にわたって議論されてきました。
しかし、動物はヒトと異なり、医師に直接自分の状況を伝えることができないため、
動物医療にとって遠隔医療は危険であるという意見を覆すことが難しい状況でした。
それが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、
少なくとも一時的には、動物医療における遠隔医療の普及を妨げる規制の壁が
下がってきています。
アメリカの対応状況
FDA(Food and Drug Administration)は、すべての獣医療の基盤である
VCPR(veterinary-client-patient relationship)を確立するためには、
直接の対面での診察が必要であるという普遍的な信念を覆しました。
つまり、通常の状況下では効能外使用薬の処方や、獣医用飼料指令を発行する場合は、
事前に対面での診察を行う必要があるが、そのVCPRガイドラインの施行を一時的に
停止することを意味します。
これらをいずれも遠隔で行うことを可能にすることで、
ヒトからヒトへの新型コロナウイルスの拡散を制限することになります。
FDAの権限は、効能外使用薬の処方と獣医用飼料指令の薬物使用に限定されています。
獣医遠隔医療のその他の規則等に関しては、それぞれの州の委員会が管理しています。
そのため、FDAの規制緩和がそのまま州当局の規制に
とって代わるものではありません。
2020年3月31日時点で、AVMA(米国獣医師会)は、アラスカ、カルフォルニア、
オレゴン、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ノースダコタ、サウスカロライナ、
テキサスおよびウエストバージニアの9州を、COVID-19の危機に対応して
獣医師向けの遠隔医療規則を再検討した州としてリストしています。
しかし全てが緩和されているわけではありません。
例えば、ペンシルベニア州では、ペンシルベニア州の法律では、遠隔医療の実施を
禁止していないとの解釈がされており、ペンシルベニア州の認可を受けた獣医師が
新型コロナウイルスに対する緊急措置として遠隔医療を使用することを
許可しています。
しかし、ペンシルベニア州獣医師会の獣医師であり、弁護士でもある
メアリー・ジェーン・マクナミー博士は
「かなり最近に対面による診察を行いVCPRを確立していなければ、
遠隔医療を患者に提供するべきではない。」と述べており、
あくまでも「ペンシルベニア州獣医学委員会および獣医診療法は、診断、治療などの
獣医療サービスを提供するためにはVCPRが必要であることを明確に述べていることを
留意すること」と言及しています。
イタリアの状況
3⽉中旬に、世界動物衛⽣機構(OIE)は、ヨーロッパ全体での⾮必須事業の閉鎖に
対応して、獣医療サービスを「必須の活動」と宣⾔しました。
世界獣医師会との共同声明の中で、OIEは獣医師を「世界的な健康コミュニティの
不可⽋な部分」と⾒なしました。多くの政府が同意し、獣医の診療を開放することを
認めています。
COVID-19によって、これまでにどの国よりも多くの⼈々が亡くなっているイタリア
では、多くの獣医師が遠隔で仕事の多くを⾏っており、
直接の検査を緊急事態に限定しています。
獣医師に、可能な場合は遠隔医療を使⽤し、緊急ではない⼿順を延期するよう
奨励しています。
イギリスの状況
英国の主要な規制機関であるRoyal Veterinary Surgeonsは、
獣医師が最初に患者を⾝体検査することなく、遠隔で薬を処⽅できるように、
職業上の⾏動規範を⼀時的に停⽌しました。
通常の状況下では、Royal Veterinary SurgeonsのRCVS職業⾏動規範は、リモートケアの
前提条件として⾝体検査を義務付けています。
要件を⼀時停⽌することは、獣医師と⼀般市⺠との直接の接触を減らすことにより、
英国で政府が課した在宅注⽂に準拠します。
RCVSの関係者は、変更を定期的にレビューする予定であり、
6⽉30⽇を超えて拡張される可能性は低いと述べています。
英国獣医師会(BVA)によると、緊急ではないケースは、リモートで処理する
必要があります。
臨床医が症例が重⼤であるかどうかを判断するのを助けるために、
BVAは緊急と⽇常のケアを構成するもののガイドを作成しました。
まとめ
以上、新型コロナウイルス感染拡大に伴う、各国の対応状況になります。
本文は著者の翻訳と解釈が含まれております。より正確で詳細な情報は
原文(Veterinarians turn to telemedicine amid COVID-19)を
ご参照ください。
非常事態という特別な状況下での一時的な緩和ではありますが、
感染のリスクをできるだけ避けるために、各国が遠隔医療の利用の方法を
議論しています。
どの国も大前提である、「対面診療によって確立した獣医師と飼い主様、動物との
関係構築」を守りながら、可能な範囲でそれを緩和し、緊急なものとそうでないもの、
遠隔で可能なものとそうでないものの区別をつけて対応することで
対応しようとしています。
日本は、まだ緊急事態宣言は発令されていませんが、感染の拡大は続いており、
ヒトの感染のリスクをいかに減らしながら必要な獣医療を提供していくかの議論が
必要な時期だと考えます。
今後の議論に期待しております。
新型コロナウイルス以前の海外のオンライン診療の議論の状況は
下記事もご参照ください。
新型コロナウイルスの影響に対して、日本のヒトの医療におけるオンライン診療の状況(2020年4月13日現在)はこちらをご参考にしてください。