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【2021年6月】畜産分野における遠隔診療~初診から実施可能の議論が進む~

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令和3年6月1日に行われた規制改革推進会議にて、

規制改革推進に関する答申の中で、畜産の遠隔診療について言及されました。

その中で、「魚病対策に関する遠隔診療と同様に、家畜の遠隔診療を初診から

行うことができることを明確化するべきである。」とのことが記載され、

その措置時期を令和3年とされております。

 

また、この答申内容は令和3年6月18日に行われた閣議にて規制改革実施計画として

閣議決定されました。

令和3年6月1日規制改革推進会議
規制改革推進に関する答申

 

養殖魚の遠隔診療については下記記事もご参照ください。

blog.mirpet.co.jp

 

水産分野における遠隔診療のおさらい

 

農林水産省では、養殖業の成長産業化のため、

令和2年7月に「養殖業成長産業化総合戦略」を策定しました。

その中の「魚病対策の迅速化への取組」の中で、「オンライン診療を可能とする

仕組みにより、養殖魚の迅速な診療体制の確保に取り組む」とありました。

 

それを踏まえ、2021年3月に迅速かつ適正な遠隔診療の積極的な活用を促す

「魚病の予防及びまん延防止における遠隔診療の積極的な活用について」(局長通知)

と「魚病対策の的確な実施に向けた取組等について」(局長通知)を発出しました。

 

その中には、「初診から遠隔診療が可能」であることの明示がされました。

 

畜産分野における遠隔医療の議論の経緯

 

農林水産省は、2019年度の「獣医療提供体制整備推進総合対策事業に係る公募」に

おいて、情報通信機器を活用した産業動物診療の効率化を検討するため、

離島等の獣医療提供体制の効率化が求められる地域をモデルとして、

情報通信機器を用いた診療の試行的な導入及びそのための検討を計画するために

広域獣医療体制整備対策事業の公募を行いました。

その事業実施期間は、2020年3月31日までとされ、

その達成目標は、「情報通信機器を用いた診療に関するガイドラインの作成」と

なっておりました。

 

また、同じような内容で、2020年度、2021年度にも公募されております。

2021年6月24日現在、まだガイドラインの発表はされておりません。

2021年度「獣医療提供体制整備推進総合対策事業」の公募について

 

また、令和2年5月27日に公表された、

第四次となる「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」には、

第1 獣医療の提供に関する基本的な方向の3 産業動物臨床分野及び公務員分野に

おける獣医療の確保、(2)診療施設の整備並びに獣医療関連施設の相互の機能及び

業務の連携の項目に

 

「情報通信機器等を用いた遠隔地からの診療体制を確保する環境を整備する。

なお、情報通信機器等を用いて遠隔地から診療を行うに当たっては、

的確な診断に資するよう、産業動物臨床獣医師と畜産農家が密に連携して

取り組むための環境を整備する。」

 

とあります。

 獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針(令和2年5月27日公表)

 

令和3年6月1日の規制改革推進会議での答申内容(畜産の遠隔診療)

 

基本的考え方

家畜については、家畜伝染病予防法(昭和 26 年法律第 166 号)に基づく

飼養衛生管理基準により、家畜の所有者は農場ごとに担当の獣医師又は診療施設を

定め、定期的に家畜の健康管理について指導を受けるものとされており、

畜産の現場では、現在でも、電話やファックス等で医薬品を処方するなど、

広く遠隔診療が行われている。

 

そして、今後、迅速かつ的確な飼養衛生管理を促進するため、遠隔診療の積極的な

活用が望まれるところである。

他方で、初診から家畜の遠隔診療を行う際に、要指示医薬品の処方を制限する

農林水産省の通知(「要指示医薬品の投与及び処方に当たっての注意事項について」

平成 19 年 12 月 19 日)も存在することから、魚病対策に関する遠隔診療と同様に、

家畜の遠隔診療を初診から行うことができることを明確化するべきである。

 

<実施事項>

a 魚病対策に関する遠隔診療と同様に、獣医師による家畜の遠隔診療についても

初診から可能である旨を明確にするための通知を発出する。


b 通知を発出後、通知の内容を周知徹底した上で、積極的に遠隔診療が

活用された事例を畜産農家や獣医師等の関係者へ周知するなど、遠隔診療がより

積極的に活用されるための措置を講ずる。


c 通知の内容は、獣医師に直接周知・徹底を行う。

 

※a、cは令和3年措置、bは令和4年措置

 

ヒトの医療での最近のオンライン診療の状況

 

令和2年4月以降、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間に限り、

院内も含めた感染拡大の防止のため、

オンライン診療・服薬指導について初診からの実施を可能とし、

希望する患者が幅広く受診できる時限的措置を実施しているが、

令和3年6月18日に閣議決定された規制改革実施計画では、

以下の方向で恒久化の内容を具体化し、実施に向けて取り組むとされています。

 

さらなる活用に向けた取り組み

 ・オンライン診療の果たす役割を明確にし、オンライン診療の適正な実施、

 国民の医療へのアクセスの向上等を図る。

 

・オンライン診療のさらなる活用に向けた基本方針を策定し、

 オンライン診療活用の好事例を展開する。

 

初診の取り扱い

 

 原則 : かかりつけ医による実施を原則とする。

 

 かかりつけ医がいない場合等  : かかりつけ医以外の医師が実施する以下の場合

 

 ・医師が、あらかじめ診療録、診療情報提供書、地域医療ネットワーク、

  健康診断結果等の情報により患者の状態が把握できる場合。

 

 ・健康な勤労世代等かかりつけ医がいない患者や、

  かかりつけ医がオンライン診療を行わない患者で上記の情報を有さない患者に

  ついて、医師が、初回のオンライン診療に先立って、別に設定した患者本人との

  オンラインでのやり取りの中でこれまでの患者の医療履歴や基礎疾患等につき、

  適切な情報が把握でき、医師・患者双方がオンラインでの診療が可能であると

  判断し、相互に合意した場合。

 

まとめと所感 

 

今回の閣議決定された規制改革実施計画には、畜産分野でも、

「獣医師が初診から家畜の遠隔診療が可能」と通知で

明確化することが明記されました。

通知の発出は令和3年措置とされているため、

今年中には畜産の初診での遠隔診療の実施が解禁される予定となりました。

 

水産分野の通知から期間を開けず、畜産分野での国の見解の発表は

スピード感を持って議論が進んでいることを示しております。

 

今回、水産分野に続いて、畜産分野でも初診での遠隔診療が可能という通知を

出すことが閣議決定されましたが、

仮に通知の発出時にペットについての言及がない場合、

法律的な根拠は、獣医師法第18条で同じため、

法解釈としては、ペットも畜産と同様ということになる可能性があります。

 

その場合、ルールが何もない中で、ペットの医療で初診での遠隔診療の実施が

可能となってしまうのではないかという懸念が出てきます。

これがヒトの医療だったらと考えた時、

ルールが何もなく、「初診のオンライン診療が解禁」と言われた場合、

相当のリスクをかかえている状況と言えるのではないでしょうか?

 

また、畜産分野では、家畜伝染病予防法による規制もあるため、

もともと制限のある分野だと考えますが、ペットの医療にはその制限がありません。

 

以下、内容は前回の記事の繰り返しになりますが、

以前から懸念としてお伝えしている内容になります。

 

国の見解が農林水産局長通知として出されているのみで、

ヒトの医療のように明確なガイドラインが示されていないことは問題だと考えます。

「初診でも可能」という文言があるが細かい規定はありません。

実際は現場の運用者の判断にゆだねられる部分も多いかと思います。

 

水産分野と畜産分野は共に産業動物という、生産効率を求められる分野で、

かつ群管理を行うことが主ですが、当社の関係領域のペットの医療はそれとは違い、

どちらかというとヒトの医療に近い分野になります。

 

産業動物は、獣医師と生産者という特定の方同士のやりとりであることと、

生産者自身も専門知識と経験を持っているため獣医師との情報の非対称性も

比較的少なく、運用上の大きな問題が起こりにくい環境と言えます。

 

一方、ペットの医療は、動物病院と不特定多数の飼い主様とのやりとりになることと、

飼い主様と獣医師の間での情報の非対称性が起こりやすいため、

オンライン上でのやりとり、

特に信頼関係のまだ構築されていない状態での初診でのオンライン診療や

薬の処方等に関しては十分な安全対策が必要だと考えます。

 

その詳細を運用者ごと(動物病院、獣医師ごと)に任せてしまうと基準の違いが生じ、

結果として誤診や薬の過剰投与などが起こりペットの健康被害や

社会に対する不利益が生じる可能性が生じます。

 

このような理由から、仮に国が今後オンライン診療の利用を推進したとしても、

明確な運用基準が無い状態だと獣医師としてもリスクを減らすために

オンライン診療の活用がしづらい状況になってしまいます。

 

仮に、ペットの医療でも初診でのオンライン診療を可能とするのであれば、

無条件での解禁ではなく、ヒトの医療のように一定の基準やルールを設けることが

大事です。

 

よって、安全で効果的なオンライン診療を幅広く活用していくためには、

国による明確な運用指針、つまりガイドラインが必要だと考えます。

 

ガイドラインには、業界全体に対する共通認識を形成することと、

一般的な運用指針を明確化、想定されるリスクを考慮しそれに対して事前に排除や

可能性を下げられるような基準や縛りを設けておくことが

大事なのではないでしょうか?

 

そのためにも、今できることを実践しながらエビデンスと経験を積んで、

今こそ業界全体の議論がされることが必要で、

それが安全で便利な獣医療の提供につながると考えております。

 

 

 

いま、実施できるオンライン相談・診療に関しては下の記事をご参考にしてください。

blog.mirpet.co.jp

 

 

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